和歌山県の山の中にある小さな本屋
この場所だからできること…
山の本屋で開くイベントは、めったにない機会。いつも「これで最後になるかも」と思いながら、「この場所だからできること、楽しんで喜んでもらうことを」と、企画してきました。絵本原画展を開く際には、店内の本棚横一面に白い布をはって、天井に設置したピクチャーレールから額絵をつるすという「にわかギャラリー展示」ですが、毎回、隅っこにおいた小さいスケッチブックに、思わず絵を描きはじめる子ども達があとを絶ちません。
初めて当店へお迎えした著者が「かいけつゾロリ」(ポプラ社)の原ゆたかさん。当時、自宅で捕獲していたイノシシ2頭を檻ごと、ドーンと店の前へ設置しており、さながら仮の動物園状態でした。それを文中のキャラクター「イシシ・ノシシです」と紹介したら、原ゆたかさんもサイン会で訪れた親子連れの皆さんからも、驚きと笑いがまきおこりました。
当店から歩いて8分に位置する上阿田木神社は、うすばかげろうの幼虫を探すこともできて、樹齢何百年もの杉木立の空間です。そんな場所なら、自然写真家・今森光彦さんをお迎えするのにもってこいだと地元の宮総代さんに相談して開催し、のちの「お宮の森でおはなし会」へとつながるのでした。
ワークショップや絵本ライブを行う時は、店のすぐ近くにある温泉宿泊施設愛徳荘の研修室や平スポーツセンターを会場としており、さいとうしのぶさんの絵本ライブと手作り絵本をつくるワークショップを行ったり、広い屋内でミロコマチコさんと一緒にクジラを描いたりしました。
あれは、宮西達也さんのおえかき会が始まる5分前のこと。おはなしのあとに模造紙を広げて絵を描くため、ふかふか絨毯の敷かれた会場に気づいた出版社の方のひと声で、あわてて家族みんなで絨毯を丸めて床一面をきれいにしたのが、昨日のことのようです。
谷口智則さんなど著者サイン会においては、目の前で絵本と同じ絵を描きサインしてくれるのをじっと見つめる子ども達や大人達。のちに「くりかえし読んでいます」という声が参加者から聞こえる度に、作家ご本人との出会いは素晴らしい…!と思うのでした。